Yes!プリキュア6*1 鏡の国のミラクル大冒険! ネタバレビュー

まず一言。


惜しい。


とっても惜しい。


この「惜しい」は、「後もうちょっとだったのに」、の惜しい。
いや、文字通り後もうちょっとだったんですよ。
もったいねぇぇ!! と叫びたいんですよ。
少なくとも、スーパープリキュアへのフォームチェンジ寸前までは、ほぼ完璧でした。
ネタ分としても笑いどころたっぷりだし、普通に燃えられる話だし。
密かに期待していた増子さんの出番のことを、すっかり忘れるくらい。


……あんまりにもガチ過ぎて、本来の視聴者がどう思うかは解りません。プリキュア5をゲキレン&電王と同列に、スーパーヒーロータイムの一部として観てる自分には。
そんな自分だからこそ楽しめた部分もあり、頂けない部分もあり。


それを意識した上で、レビューを始めたいと思います。
要するに、特撮ネタ過剰で脱線しまくりの、いつも通りの調子で。



ダークドリーム
キュアドリーム、正直に言うわ。
 私には今まで、友と呼べるような奴はいなかった。欲しいとも思わなかったしね。
 だが、あなたは……唯一の友と……言えるのかもしれない」


キュアドリーム
「うん。友達だよ、私たちは」


ダークドリーム
「戦ってくれ、私と」


キュアドリーム
「……ええ。私の望みを聞いてくれたら、考えてあげる」


ダークドリーム
「何?」


キュアドリーム
「死なないで、ダークドリーム


ダークドリーム
「……あなたもね!」



(劇場版『仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』ラストシーンから改変)

日曜朝の、東映バンダイプライムタイムにおいて。
鏡の世界といえば、《ミラーワールド》でのライダーバトルを描いた、仮面ライダー龍騎
もう一人の自分、主人公の影の存在といえば、EPISODE FINALに登場したミラーワールドの城戸真司=《仮面ライダーリュウガ》なわけで。
龍騎VSリュウガ的なものを、想起せざるを得ない本作。


果たして《キュアドリーム夢原のぞみは。
5年前、《仮面ライダー龍騎》城戸真司が辿った運命と、同じ道を進んだのだろうか?
それとも…………

心を熱く希望の色に燃やそう


夢よ踊れ この地球(ほし)のもとで
憎しみを映し出す鏡なんて壊すほど
夢に向かえ まだ不器用でも
生きている激しさを 体中で確かめたい


(仮面ライダー龍騎OP「Alive A Life / 松本梨香」より)

前置きはここまでにして、ストーリーを追っていきます。

前説 ココナッツのなつやすみ? 編

……っと、その前に。
映画本編の前説、モモタロスのなつやすみ的なものがあったことにも触れておかねばなりません。
そう、劇場で子供たちに、正確には「中学生以下」の来場者に配られたミラクルライト。
この使い方を、ココとナッツ、ミルクがレクチャーしていたのですよ。
関係ないシーンで光を当ててはいけないとか、振り回したら怪我して危ないとか。ええ、世間で騒がれてる「プリキュア初の流血シーン」の正体がコレです。劇画調になったココに折れたミラクルライトが命中、実際に血を以下略と。


しかし異常なのはそこだけじゃなくて、こいつらのテンション自体おかしい。
「みんな、こんにちわぁぁ!!」と、キャラショーお約束の呼びかけから始まった時点で、よく分かってるのか何なんだか。もっと大きな声で、という二回目がちゃんとあったし。
そして今年のマスコットキャラは、一味違う。ココが小々田先生にフォームチェンジして、大人の皆さんもありがとうございますとご挨拶。
流石は小々田先生。さぞ居た堪れないであろう、大きなお友達へのフォローも万全でした。特に、イケメンフォームにチェンジしたもののやる気がないナッツを、押し倒してじゃれ合い始める辺り。
キワどい台詞の多いイマジンたちのグッズが、アニメイト等にいっぱい並んでる電王にしろ、今年の東映バンダイは対策万全という解釈でいいのかな?


でもこういう使用上の注意を、本編のキャラを使って楽しくやったのは、普通に関心しました。
別に遊んでるわけじゃなくて、ちゃんと本来の対象年齢の子たちを考えてのことだし。
個人的には、「高校生以上の皆さんも応援してください」との旨も伝えてくれたこと。別に中学生以下の人だけ応援するわけじゃない、ってことだから。
「最後まで希望を失わずウルトラマンを声援する、それだけでも彼らと共に戦っていると言えるのです(by サコミズ総監)」――あの時メビウスを応援したのは、子供も大人も同じわけだから。
流石は「観客参加型映画」と言い切るだけのことはあります。

ものがたり1‐1 お姫様お姫様ってお前らお姫様村の住人かよ、ってそういうテーマパークだから仕方ない編

さて本編。
空気が一変し、いきなり敵側のドラマからスタート。
そしていきなり誕生する、ミラーワールドの夢原のぞみ。ええ、ダークプリキュア勢では彼女だけ先に誕生しました。
つまり真っ先に、のぞみの影が狙われたわけです。
まだ変身はせず、某水銀燈を髣髴とさせる黒ゴスロリを来たダークドレアムダークドリームは、そのままのぞみ一行を偵察することになりました。


一方、暇を持て余す主人公勢は、テーマパーク「プリンセスランド」で遊ぶことに。
OPが流れながら、5人+ココナッツミルクが、ドレスやタキシード等にお着替え。
お姫様気分、というより本当にお姫様の格好で遊べるらしいです。貸し出してるの、衣装?
男の客もいなくはないようですが、家族の付き合いでもない限り、何を求めてこのテーマパークに来たのだろう?


OP明け、身も心もすっかりお姫様となった、うらら&かれん&こまち。
戯れでお姫様ごっこ、はいいのだが、何故にうららがふたりを「お姉さま」と呼ぶ? 自分はマリみてを中途半端にしか知らないけど、敢えて言おう。紅薔薇姉妹、自重しろ。
……一応解説。「学園の薔薇」こと水無月かれんの容姿が、《紅薔薇のつぼみ小笠原祥子さまに似てるのは承知の通り*1。「学園の百合」こと秋元こまちも、後ろに伸びてる髪を除けば、《紅薔薇水野蓉子さまに似てなくもない。で、うららと同じツインテールなのが、《紅薔薇のつぼみの妹》の主人公・福沢祐巳、と。
だが、少なくともこの紅薔薇姉妹は、「オーッホッホッホッホ」と揃って高笑いはしなかったと思うぞ、こまちかれんうらら。
三人の共鳴から、こまち=CV永野愛=玉木麗香児童会長(※『どれみドッカ〜ン!』当時)の懐かしい高笑いを聞き取ろうと苦心していると、りんが「かれんさんはお姫様というより、女王様」と視聴者の感想を代弁してツッコんでくれました。GJ。


のぞみも登場、小々田ら本物の王子も登場。
騒がれるココナツだが、その正体を知るりんが、これでココ〜とかナツ〜とか言わなければと愚痴るも、その物真似は誰が聞いてもクロミ様そのものゾナ。
で、はいはいココのぞココのぞ、なシーンが挟まれる。けど、お互いがお互いを「どこに行っても見つけ出してみせる」というやり取りは、ちゃっかり伏線だったり。


その後鏡合わせのアトラクションで、ココナツが鏡の中へあっさり拉致。
広場で王子様がお姫様を追い掛け回すと言う意味不明のアトラクションでは、りんがブッチギリで逃げ去り誰にも捕まえられないというお約束を経て。
ユカイな日常パート終了。
ミラーワールドからの刺客その1、偽ココと偽ナッツ登場と相成りました。

ものがたり1‐2 「人は“心”だろうが!!!!(by サンジくん)」編

驚いたのはここから。
声帯もコピーしたらしく声はそのままながらも、様子のおかしいふたりを。
いきなり「誰!?」と見破るのぞみ。


参ったぜ。何てこった。(by ゴウ兄さん@ゲキバイオレット)


こないだの『ゲキレンジャー』38話では、幻獣ミノタウロス拳・シユウのゲンギ《転身反》で、レツを鏡の世界に閉じ込め自分が偽レツに化けるという、今作そのまんまなエピソードがあったのですが。
これを見破ったのは兄・ゴウのみ。ジャンたちゲキレンジャーの仲間も、マスター・シャーフーでさえも、レツが偽物だと気づかなかったのですよ。女子中学生に完敗って、情けな過ぎるぞお前ら。シャーフー「も」一緒に修行し直してきなさい。
戦隊では毎年恒例で必ず1回はやっている、この手の偽物との入れ替わり話(あるいは本物と本物の人格入れ替え話)では、本物が「どうして気づいてくれないの?」とヤキモキするのがお約束ですが。
そして、完璧に騙されて仲違いしてしまうというグダグダな展開の続いた、『仮面ライダー555』なんて作品もありますが。前述の『龍騎 EPISODE FINAL』でも、リュウガが龍騎だと皆見間違えてましたが*2
視聴者側としては、何ともイライラする話であります。てか、子供の頃からずっと、この手の話は苦手でした。
だからこそ先輩戦隊のデカレンジャーが、似た話で「正体を知りつつ騙されたフリをする」という離れ業を披露してくれたのは嬉しかったのですよ。育まれた絆が、都合よく消えたりはしないと描かれてて。


果てさて、夢原のぞみの場合は。
有無も言わさず、一発で見破る。グダグダもイライラも、一切なし。キュアドリームにも前置きはねぇ、最初っからクライマックスだぜ!
さっきの中学校教諭と生徒のラブラブなやり取りは、決してこのご時世的に問題なものだけではなかった。生徒が教師との約束を、有言実行したとも取れるわけです。
きっとのぞみなら、草加雅人@仮面ライダー913の罠も華麗にスルー、桐矢京介の暴言も正面から反論して打ち負かし、人間関係を壊すことなく平和な日常を送れることでしょう。
ザラブ星人がニセウルトラマンメビウスに化けようとも、「よ〜く見ろ、目つきが悪い」と看破し(以下延々と続く)

ものがたり1‐3 東映アニメーションの不屈の制作魂? 編

かくして偽ココナッツは作戦失敗、もはや武力に訴えるしかない。ナイトメアの仮面ver.2をかぶり*3、合体して双頭のコワイナーに。
プリキュアも変身し、戦闘開始。
ドリームアタック、ルージュファイヤーなど、素手で放つプリキュア5の必殺技・パート1を駆使し戦う一同、つまり本気は出してない。
そんな様を偵察するダークドリーム、残りのプリキュア4の姿を黒幕に送り、そこからダークプリキュアを製造。
……本気じゃない状態のコピーって時点で、あの4人はあっさりやられるかな、とか思ってた自分です。何より4人は「変身後」のコピーであり、正体であるのぞみのコピーはダークドリームだけでしたから。


何にせよ、第一戦終了。
コワイナーが元の姿に戻ると、…………遂に登場。
何故か映画のポスターなどのイラストで、前面のいい位置にいるミギリン&ヒダリン。
すなわち――今回の映画の一番の懸念。
芸能人ゲスト、ザ・たっち。
…………皆まで言うな、覚悟していたんだ。売り上げを求めるなら、たとえマスコミに持ち上げられただけの典型的な一発屋芸人*4であろうと、棒読みしながら宣伝してくださる芸能人様に粗相をすることはってあれ? 言う程演技は悪くない。
少なくとも、電王VSしん王の時のハナさん、ナオミ以上には喋られてる。まぁアレは、アフレコ慣れ過ぎてる良太郎が異常なだけ(※オーナーは心配すること自体失礼)、なんだけど。
実は本編冒頭からザ・たっちの出番はあったのですが、その時は気づかなかった。ふたりの演技、ギリギリで平均点くらいは出してる。棒読みではない。


さすがは東映、と言っていいのかどうかはわかりませんが。こんな話があります。
『明石屋マンション物語』のキャラクター「不叶姉妹(姉・ココリコ田中、妹・今田耕司)」が、劇場版『ONE PIECE ねじまき島の冒険』にゲスト声優で出演したことがあるのですが*5
そこで実際に採用されたのは、今田さんの「カモメの声」だけ。
田中さんに至っては、全部カット。
……これこそが、アニメにも存在する『ONE PIECE』の心意気。プロ根性なのかと(勝手に)感動したものです。


そういえば『ONE PIECE THE MOVIE カラクリ城のメカ巨兵』でも、声優初挑戦のSMAP稲垣吾郎が出演してましたが、ドクター・ラチェットのキャラに助けられたか、そこそこ巧かったです。
同じく極楽とんぼのふたり(※当時。……ああ涙。)も出演してましたが、こっちは本人と判らないくらいの演技力で驚きました。正直、彼らを使う意味ないんじゃないかってくらい。
ザ・たっちも、そこまでは行かぬとも。本編を見る上で、致命的な支障を来たす程の失策はしていない。
ぶっちゃけ、子供なら気にならない程度でしょう。なら十分ってこと。



ああそれと、これも書いておかねばならない。
ザ・たっちの持ちネタ「幽体離脱」を、ミギリン&ヒダリンも披露したのですが。
プリキュア5から逃げようとした時、注意を逸らすためにやったと考えれば、まぁ不自然じゃない。
そしてもっと自然だったのは、それにウケたのがこまちだけだったこと。うん、こまちは笑っていい。そういうキャラだ。
……うららもウケてた気がするけど、これは売り出し中の芸能人同士の、不屈の《芸人魂》が通じ合ったってことにしておいて(?)。
正直、ザ・たっちの演技力と同じくらい怖かったのが、ゲストだからと過剰に優遇されて、彼らのネタにプリキュアのキャラが大爆笑されられやしないか、ってことで。
のぞみ辺りなら腹抱えてもいいっちゃあいいかな、と構えてはいましたが、実際は全然でした。
そして、りんは完全スルー。その隙に逃走を計るミギリン&ヒダリンを、あっさり確保。


極端に芸能人を持ち上げるでもなく。
変に周りのキャラを壊すでもなく。
同じ作品中のキャラクターとして、ちゃんと扱った。
これは特筆に価すると思います。
……事実、ミギリン&ヒダリンの出番は意外に多く、結構いいところを持って行ったりもします。前作の、映画S☆Sのアワーズ&ミニッツのように、ゲストキャラにプロの声優使ってればもっと感動できたのに、と惜しく思ったことはありました*6


けどまぁ、最低限越えちゃいけないラインは、しっかり守れてましたよ。
これからも、この手の芸能人ゲストは。
オファーする側も、オファーされる側も、それを見る側も、苦虫を噛み潰したような思いをしないような創りにして頂きたいものです。



ストーリーに戻ります。
ナッツハウスに連行され、主にミルクに脅されつつ尋問されたミギリン&ヒダリン。ここのミルクとの絡みが、意外と生きてきます。
そして彼らの、そして彼らの国の事情を知ったプリキュア5+ミルクは、ミギリン&ヒダリンの案内で、滅ぼされつつある鏡の国に向かうことに。
……ただし、その扉が開くのは、午前2時。
『どれみ無印』でも、魔女界には笑う月が出る夜にしか行けず、つまり魔女見習いの新旧試験は真夜中にしか受けられず。当時幼稚園年少組だったぽっぷには起きられない時間だから、ずっと無級のまま、なんてことがありましたね。
プリキュアが中学生で良かった良かった。こまちとか、寝不足には慣れてそうだしね。のぞみだけは、朝起きるの苦手そうで心配なのだけど。

ものがたり2−1 鏡の中に世界なんてありますよ。ファンタジーやメルヘンなんだから編

到着後、即現れる黒幕・シャドウ(性別不明、ってか中性的。露出した腹筋が眩しい)。
早い、早いよ。お前まで前置きなしでクライマックスかよ。
タイトルが「鏡の国のミラクル大冒険」なんだから、少しは冒険させたげようよ。これじゃ冒険じゃなくてボウケンジャーだよ。
……ああ、ココとナッツ、それとこの後奪われるドリームコレット=プレシャスを奪還するミッションをしに来たんだな。ならいいや。
ちなみにシャドウのCVは朴ロ美さん。最後まで気づかなかった、プロ声優の面目躍如。


さて、ここでいよいよ今作の目玉。
桃赤黄緑青のクリスタルを割って、プリキュア5そっくりの戦士《ダークプリキュア》が登場するわけですが。
ああ、このクリスタルを奪われたから鏡の国は征服されたそうな。ミギリン&ヒダリン曰く、クリスタルの力はそういうことに使ってはいけない、だそうで。まぁ、クリスタルの悪用くらいFFシリーズじゃ日常茶飯事だぜ!


ところで、ここでちょっと引っかかった自分。
ダークドリームに初対面したのぞみが、その姿を見て「あたし!?」と驚いていたんだけど。
うん? ココは見抜けても、自分自身は見抜けなかったってこと?
確かに彼女だけ、変身前の「夢原のぞみ」のコピーなことは間違いないんだけど。衣装は黒っぽいし、それこそ「目つきが悪い」。
ミギリン&ヒダリンが姿をそのままコピーした偽ココナツとは異なり、あくまでも見た目は「似てる」だけ。そりゃそうだ、ダークプリキュアは「能力のコピー」なんだから。
……そもそも今回の映画の宣伝文句プリキュアvsプリキュア!? ホンモノはどっち??」からして、自分は頭を抱えていた。
判るから。見れば。ニセメビウスより判り易いから。
そりゃお前が大人な視聴者だからだとか言われそうだけど、正直子供が勘違いするほど似てる「ニセモノ」っているだろうか? ニセケロロ小隊を見て、ホンモノのケロロだと思う子供がいっぱいいたら、軍曹が泣くぞ。
そもそも、どっちが本物か迷うような展開なんて、何処にもなかったじゃない。


キャッチコピーはともかく。
あれ程鮮やかに、最初っからクライマックスにココナツの真贋を見破ったのぞみが、黒っぽい自分を見て何故に「あたし!?」と思ったのか。
……実のところそれは、この後明らかになるのでした。ええ、びっくりだよもう。悪かったよ、どうせ穿った見方しか出来ない自分が悪かったんだよ!(笑)



置いといて。
ここで5対5のバトル開始か、と思いきや。
何とダークプリキュアも自分の作った鏡の世界だかバトルフィールドだかに、それぞれ対応するプリキュアを放り込んだ。
ここは普通に残念だったかな、少しだけでも集団戦が見たかった。偽物勢は「冷酷で友情の心を持たない」らしいから、本物がそこを突いた連携プレーを見せそうなものなのに。
あるいはダークドリームVSルージュとか、親友の影との対決も面白そう。
ダークルージュを容赦なくブッ飛ばすレモネードとかね。いやいや「人は心」だからです、いつも以上に気合入れてなんていませんよ、りんさん?(※のぞみ争奪戦的な意味で)


……どうでもいいけど、何で偽物は偽「者」とも書くけど、本物は本「者」と書かないんだろう。本当にどうでもいい。

ものがたり2−2 鏡が光を反射して出来るのは影であって、闇じゃない編

ここで、パンフレットには書いてなかったダークプリキュアのCV勢を紹介。

ダメだ勝てそうにねぇ。


特にダークレモネードとか、ダークミントとか、ダークミントとか、ダークミントとか。


CV皆口の悪役ボイス。はい無理ー!



絶体絶命の状況を前に、個人戦にもつれ込んだ、本物VS偽物戦。
それぞれのバトルステージは中々気合入った異世界で、そこでプリキュアはもう一人の自分から精神攻撃を受けます。言うなれば、自分の悪しき心との戦い。
成る程、だから個人戦なのか。
偽物の力は全く同じで、疲れることを知らないらしい。もっとも全く同じ能力を使うわけではなく、ダークレモネードは「ダークフラッシュ」だか「ダークスラッシュ」だが、どっちか聞き取れない蹴り技の衝撃波を使っていました。
ダークミントの能力も攻撃に特化されており、そのものズバリ「自分だけ防御しか技がないなんて、本当は損だと思ってるんでしょ」(大意)と、心の闇を突いてきました。CV皆口で。
不利だ、不利過ぎる。CV的にも戦力的にも、ミント戦はハンデあり過ぎだ!


お約束通り、最初は押される本物。
が、ここから反撃開始。過去の自分を乗り越える、これもお約束通り。
のぞみもまた、『最遊記』における対偽物戦で主人公勢がフルボッコした時の、「今までのデータだか何だか知らねぇが、それって所詮は昨日の俺だろ?」的なことを言っておりました。さっきより1分でも1秒でも先に進んでいる、成長したいと。
が、流石に外さないなぁと思ったのは。


5人全員が、最後まで独りで戦って勝利した。


これに尽きるかと。
OPの歌詞には「仲間がやってきて ハロー たすかったよー」とありますが、今回は違う。
過去の自分との決着は、自分だけで。
仲間がやってこなくても、助かった。
仲間が側になくても、仲間のおかげで成長できたから。仲間を守りたいから、プリキュアは強くなるわけです。
「ふたり」ではなく、「ひとり」で変身できるプリキュア5の設定が、ここで見事に生きた。脱帽です。


また個人戦のバトル演出も、異常に拘っていました。
少なくとも、偽ココナツ戦で撃たなかったプリキュアの必殺技・パート2で即終了ではなく、ちゃんと流れを見せていた。
ああ、あの「剣・魂・一・擲」アクアリボンソードがスクリーンで復活したことは明記しておきましょう。ダークアクアソードの鍔迫り合い……と思ったら、容赦なく右脚を腹に叩き込むアクア。ガチだ、この人ガチだ。
ミントが技名の詠唱なしで、ピンキーキャッチュから円形の簡易ミントプロテクションを貼ったのも、なかなかカッコいい演出です。TV版にも輸入してほしいところ。
それと、追い詰められたダークレモネードの、唄による反撃には吹いた。唄っていうより、叫び声。超音波攻撃。《死の絶叫(キーニング)》だコレ。唄は皆を幸せにするもの、こんなの唄じゃないと反論するレモネードだけど、それ以前の問題だ。


過去の自分、影の自分。
それを否定し、乗り越えていくルージュ、レモネード、アクア。
さて、ミント戦はどうなったかというと。
特攻をかけたダークミントが、ミントシールドに弾かれ、自滅。
消え行くダークミントを、抱きかかえるミント曰く。


「本当はあなたも守りたかった」


ミント、完勝。
守るという力に誇りを持つミントの信念は、最後まで砕かれなかった。
その信念に屈し、ダークミントは涙を流し散っていった。
最後までキュアミントらしい戦い方で決着。拍手。
いや本当は、影の自分をも守り切らなきゃ、こまちとしては納得できないんだろうけど……


個人的に驚いたのは、このダークプリキュア戦のBGMが、全体的に悲壮感のあるだったということ。
自分との戦いのシリアスさを演出したかったのだろうし、自分自身を手にかける哀しさも表現したかったのだろうけど。
もうちょっと晴れやかな、明るそうな音楽でも良かったのでは? とは思いました。映画見終わってからも、音楽が全体的に暗いんじゃないかと首をひねっていました。
でも、このミントの戦いの決着を踏まえるなら、この曲で正解だったのでしょう。
暗いという意味でも、本当にガチな対決でした。



が。


また。


やってくれました。


モモタロスのクライマックスな行動力と、野上良太郎の精神力を併せ持つ。
仮面ライダー電王》と、肩を並べる程のスーパーヒロイン。


キュアドリーム夢原のぞみが。
ダークドリームのエネルギー波を、片手で弾いた。
哀しげなBGMごとかき消して。


静寂に包まれる映画館。
来場した子供さんたちも、黙り込んでます。
戦隊&ライダーの映画では、どんなシーンでも子供が騒いでるのは日常茶飯事なのに。


大小問わず全員の観客が、そして誰よりもダークドリームが、キュアドリームのその姿に絶句していると。
キュアドリームは、彼女に手を差し伸べて――



元の世界に帰還するルージュ、レモネード、ミント、アクアが見たのは。
ダークドリームとふたりで帰還するドリームの姿。
驚く4人、そりゃ驚くわ誰でも。
そんな4人に、ドリームは笑顔で言ったのです。


「この子は私の友達!」


ええええええええええ!!
ええええええええええええええええええええ!!!!
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!


――『仮面ライダー龍騎』の城戸真司は。
のぞみよりも、春風どれみよりもお人好しで。
ミラーワールドで戦うライダーの中では誰よりも、「守るために」戦っていました。
モンスターに狙われる、罪なき人々を守るために。そして、ライダーをも守るために。
ライダーバトルに勝利すれば、どんな望みでも叶えられる――その言葉を信じ、誰もが自分の欲望、あるいは儚い願いのために戦っている中、たった一人で。
やっと現れた協力者を失っても、決して信念を曲げずに。


彼が《仮面ライダー龍騎サバイブ》にパワーアップした理由も、大切な友達を「止める」ためでした。
多くの犠牲者の出た戦い、だからこそ止めたい。誰も死なせたくないから、真司は戦い続け、TV版では最後に…………


そんな彼が、唯一「倒した」――
いや、『龍騎』という作風的に、はっきり言ってしまいましょう。
唯一彼が「殺した」ライダーが。
自らの影《仮面ライダーリュウガ》でした。
彼の心を以ってしても、リュウガだけは「守る」ことが出来なかったのです。


その戦いから5年後*7
「お人好し」の系譜を継ぐ、スーパーヒロイン夢原のぞみは。
自らの影をも救ってしまった。



そりゃのぞみも、ダークドリームを初見で「あたし!?」と見間違えるはずです。
彼女は、彼女だけは「夢原のぞみ」のコピーだった。
友情の心を持たず生まれた彼女は、すぐ本物ののぞみを偵察し。
友達と楽しそうに遊び、笑うのぞみを理解できなかった。そんなこと習っていないと。
理解できぬが故、その心が妬みに代わり、ダークドリームに襲い掛かった。
が、のぞみは看破した。
嫉妬出来るということは、「心がある」ということだと。
彼女も、人間であると。同じ「夢原のぞみ」だと。


『Yes!プリキュア5』はあくまで女児向けアニメであり、販促アニメだった。
ニチアサキッズタイムではあっても、スーパーヒーロータイムとは関係ない(てか東映と、東映アニメーション自体が違う)。ライダーや戦隊のような長い歴史も(まだ)ない。ヒーローものとしての要素を、過剰に求めていい作品ではない。
けれども。
自分たちは、新たなヒーローの出現を目撃しているのかもしれない。
女の子向けだからこそ産まれた、誰よりも優しく強い、最高のヒーローを。


……TV版もこの調子でお願いしますね。
もう二度と、ガマオのように全く省みられることなく倒される、哀しい出来事が起こりませんように。

ものがたり3−1 ボウケンシルバーの後輩、眩き光の中で散華する編

一方その頃、っていうかのぞみたちが戻ってくる前に。
ミルクは単身、ココとナッツを救うべく、シャドウの元へと向かっていた。
かなう訳ないと弱気のミギリン&ヒダリンを叱咤し、独りでも向かっていった。
うぉ、何気にミルクが熱い。彼女も成長していたんですね。
ミルクを守るべく、ミギリン&ヒダリンも心を奮い立たせる……


そんな彼女たちを救うべく、ドリームコレット奪還のミッションのため、ボウケンジャーが帰ってきた!
そして主人公の傍らには、新たな6人目の戦士《ボウケンシルバー》が!
6人となった轟轟戦隊ボウケンジャー、アタック!


……間違えた。


そんな彼女たちを救うべく、ココとナッツとドリームコレットを奪り還すため、プリキュア5が帰ってきた!
そして主人公の傍らには、新たな6人目の戦士《ダークドリーム》が!
6人となったGoGo!戦隊プリキュア5、Yes!


…………今度は、間違ってないですよ?
当たり前のように、ダークドリームが混じってました。プリキュア5に。


ボウケンジャーの後輩戦隊・ゲキレンジャーは3人で、追加戦士は2人。
ゲキバイオレットも、ゲキチョッパーも、「6人目の戦士」ではない。
つまり、「6人目の戦士」としてのボウケンシルバーの後輩は、ダークドリームに、けってーい!


……やっぱりプリキュア5は、31.5番目のスーパー戦隊ってことになりませんかね? 『大戦隊ゴーグルファイブ』、『救急戦隊ゴーゴーファイブ*8に継ぐ、レンジャーでもマンでもない戦隊ということで。
2期の名前も「GoGo!」だし、是非ゴーゴーファイブとゴーゴー対決を(意味不明)。


まぁ真面目に考えれば、満&薫の後輩でいいと思いますが。
系譜的に、無印キュアの入澤キリヤを汲むキャラクターは、劇場版に宛がわれていたんですね。



しかしドリームコレットを手にしたシャドウは、怯まない。
世界中のピンキーを鏡の世界に引きずり込むことで、55匹*9コンプリートしてしまったのだ。っておい、ナイトメアを差し置いて何やってんだお前。
いいんですかデスパライア様、自分たちと関係ないところで、ドリームコレットが発動しようとしてますよ?
ちなみに願い事は「この私を不老不死にしなさい!」でも、「コスモカプセルよ、消滅して未来を変えてくれ!」でもなく。
「この私を世界の支配者に!」だった。支配した後どうするかは知らない。「世界」が具体的に、何処から何処までなのかも不明。
けどまぁ支配すれば、即座にプリキュア5の自由を奪えるのは確か。
しかし、願いは叶わない。何故? 場所・暗号・合言葉・それともボールの並べ方?


種を明かすと、実は全部集まっていなかった。
正確には、全部がドリームコレットの中に納まってなかった。
レモネードがピンキー1匹を確保したまま、ピンキーキャッチュに放置してたのだった。
……確かに、ピンキー集めて終わりじゃなくて、ドリームコレットに55匹「戻す」ことが必要なわけで。ギミック的には巧いし、うららならやりそうなことではあった。
ダークドリーム辺りが身体張ってピンキー取り戻して、ドリームコレット発動を防ぐってのもアリだと思ったけど、まぁいいや。
一息つけるくらい間抜けな展開挟んだほうが、見るほうも疲れなくて済むし。


とにかく、売り出し中の新人アイドルの天然のおかげで、世界は救われた。
が、ブチ切れたシャドウがプリキュア5を蹴散らし、その魔手がドリームに迫る!
それをかばったのはダークドリーム。胸のクリスタルが砕け、致命傷を負った。


「私、笑うことが解らなかったけど……」


ドリームの、守りたかった友達の胸の中で、消え行くダークドリーム
最後の瞬間、彼女は笑っていた。
プリキュア5、幻の6番目の戦士に敬礼――


少々あっさり目の最後ですが、これは「重い」。
繰り返しますが、相当「重い」ですよ。詳細は後述します。

ものがたり3−2 「誰が褒めなくても、私が記事にするから! あなたたちが偉い人だってことを!」編

怒りのキュアドリームの必殺技・パート2《クリスタルシュート》が、シャドウに直撃。
と、ここでようやくココ&ナッツを奪還。
どんな姿になっても必ず見つけ出す、それを有言実行したドリームがココを抱きかかえる。
「小々田先生」とのイチャイチャなだけと思ったあのシーンは、実はそれだけじゃなくて、「ココ」との絆をも示していたと考えると、結構深い。


TVで「小々田先生」のイケメンに頬を染めるのぞみですが、確かに小々田は外面も中身もいい男ではある。問題は、「ココ」と「小々田先生」が、口調はおろか精神年齢ですら違うように見えることで。
のぞみがロマンスを求めるのは、「小々田先生」のほうだけじゃないかと、ずっと心配だったんです。
でも本当の姿は「ココ」だからね。本人も「小々田先生」でいるのは疲れる、って言ってるからね。
先代のプリキュアのように、妖精キャラとの純粋な絆を――「ココ」との絆を示してくれたのは嬉しいです。


が、なおも悔い下がるシャドウ、リンギ・邪身豪天変的な何かで巨大化。本当にノリが戦隊だ。
そこで助けに入るミギリン&ヒダリン、うぉ普通にカッコいい。
よし、今がその時だ! お待たせしました、来場の中学生以下のお子様たち。
今がミラクルライトをかざす時だってタイミング分かりにくっ!
何故か持ってたココたちもミラクルライトを振る! かざす! 本編内で少しずつ集まり始める奇跡の光!
でも会場の子供が、いつ、どのタイミングでかざせばいいかは、明確に指定されなかった。
……事実、お子様はライトがちゃんとかざせてなかった気がしますよ。自分が劇場の様子を見た限りでは。


この辺は、マイメロ1期&2期最終回のほうが圧倒的に巧かった。
そりゃそうだ、1期ラストではクロミ様が「TVの前の皆も助けて!」って具体的に要求してたし、2期ラストでもマイメロが「一緒に早口言葉を言ってね」と直接求めていた。TVの前の子供たちに。
それと同じことが、何故出来なかったのだろう?
折角の「観客参加型映画」なのに、どうして?



これは、プリキュアシリーズ全体が抱えている問題を示している、かもしれません。
……けど、最初に言っておきます。すみません、MaxHeartについては未見なので分かりません。毎度の事ながら陳謝。


プリキュアの戦いは、ほとんど「現実」に影響を及ぼさない。及ぼしても、その変化を誰も認識することがない。
無印では、ラクロスの試合や合唱大会の途中で戦いに抜け出しても、それを誰も責めることはなかった。角澤竜一郎が覚醒しジュナになった時、誰もが人間・角澤竜一郎のことを忘れてしまったってのもありましたっけ。
S☆Sでも、一旦退場した満&薫のことを、咲&舞以外の誰もが覚えていなかった(復活したら皆思い出した)。


プリキュアの戦いで何が起ころうと、一般人が、それで心を動かされることはない。
もしもプリキュアが敗れ、世界が滅びようとも、一般人は「自分たちの世界が滅びた」ことを認識することすらなく、消失したことでしょう。
この設定は、何も考えずその身を委ねれば、凄まじく楽チンです。
でも、よぉ〜〜く考えてみると、相当キッツイです。
それこそ、桜井侑斗のことを誰も覚えていない、だからこそ幸せな歴史を見せられた《特異点野上良太郎の辛さに、匹敵するほど。


どういうことかというと。
プリキュアは、市井の人々の声援を受けることも、感謝されることもない。
どんなに心折れようと、ウルトラマンスーパー戦隊のように、人々の良心を糧に立ち上がることも出来ない。
あるいは仮面ライダーのように、市井の人々とは違う姿に――宿命に、偏見を持たれることすらない。
人知れず戦い、人知れず世界を救う。
それが《プリキュア》の宿命なのです。
……自分としては、鏡を利用してピンキーが集まったように、鏡を利用してあの世界の子供たちの光を集める、それに劇場の子供たちも加わる――そんな展開を予想したのですが。
それは許されないのです。あの世界の子供たちは、プリキュアのことを知らないから。



今から丁度40年前――
ウルトラマンと同じ1967年に初めてTVの中に飛来した、《パーマン》というヒーローがいます。
パーマン1号》須羽みつ夫はパーマンに任命され、人知れず戦ってきました。
パーマンの活動は主に深夜に行なわれるため、みつ夫の日常生活を大いに侵食しています。コピーロボットである程度対策は取れるけれど、結局は家族や先生に寝不足を叱られ、友達に馬鹿にされます。
そしてパーマンの正体は、誰にも明かせない。パーマン仲間にも明かせない。だから誰にも感謝されない。まさにヒーローの宿命です。


パーマン》として戦っても、小学5年生の「須羽みつ夫」にとっては何の意味もない。
そんな彼の苦悩を描いた、「パーマンはつらいよ」という話があります(アニメ第1期最終回Bパートも、この話だったそうな)
ヒーローの宿命に耐えかね、パーマンをやめようとするみつ夫に、バードマンは言います。
「自分に得にならなくても、褒められなくても、しなくちゃいけないことがあるんだよ」
みつ夫は、その言葉に最初は納得できずとも、結局は《パーマン1号》に復帰します。
水害のレスキュー活動に向かう彼に、バードマンは問いました。
「何の得にもならず、人に褒められもしないのになぜ行くんだい」、と。
パーマン1号は言います。「わからない。でも行かずにはいられないんです」
そんな彼の後姿を見て、バードマンはそっとつぶやきます。
「誰が褒めなくても、私だけは知っているよ。君が偉い奴だってことを」
(参考サイト:『パーマン なんでも帳』さんの、キャラクター別感想「パーマン1号」)


人間界的には何の得にもならず、一般人に褒められもしない。
なのに何故、彼女たちは戦うのか?
それは、異世界の友達――メップルたちや、フラッピたちや、ココたちの世界のため。
そして、自分たちを育んでくれた、自分たちの世界が好きだから。戦いなんて知らなくていい、ずっと平和な日常を守りたいと。


そんな彼女たちに。
「誰が褒めなくても、私たちは知っているよ。君たちが偉い人だってことを」
と、言ってやれるのは。
映画館にやって来た、子供たちしかいないじゃないですか!


この「観客参加型映画」には、そういう意味があった。
だからこそ、もうちょっと分かり易いやり方で、ミラクルライトの光を集めてほしかったのです。


……ちなみに、「一般人がそれで心を動かされることはない」と言い切りましたが、例外は存在します。
無印序盤でプリキュアを目撃し、コスプレした挙句戦いに巻き込まれた夏子&京子。
そして5で、プリキュアを記事にした、我らが増子美香編集長です。
いつか夏子&京子が先頭に立って、子供たちを引き連れプリキュアの応援に駆けつけたり。
増子さんが、このバードマンの名台詞に近いものをプリキュアに呼びかけてくれるんじゃないか、そう期待しています。……ないなら自分で考え出すさ、一から。


そしてバードマンは、まるでゾフィー隊長のように何もしないまま美味しいところだけ持っていくなぁ、なんて思ってはいませんよ兄さん?(※プリキュアに全く関係ありません)
……てか、災害救助なら人命が最優先でしょうに、バードマン。

ものがたり3−3 月光蝶は、奇跡の輝きをも黒歴史に埋葬していく編

ともあれ、光は集った。
各員、スーパープリキュアにパワーアップ完了です。
1時間前にやってる戦隊の、スーパーゲキレッド&ブルー&イエローと名前がカブってますが、気にしない。
ところで映画のCMで流れたキュアドリームの蝶へのキスシーンですが、このパートのことでした。蝶の力でパワーアップし、それに感謝してのことっぽい――ああ、こういう時に使うんですね。せーの、「欧米か!」


このスーパーフォームの特徴は、フリルの数が増えたのと。
何より、背中に蝶の羽根が生えたこと。そう、空陸ユニットになったのです。
跳躍ではなく、飛行できる。戦術の幅が大きく広がります。
果たして、今度はどんな超バトルを見せてくれるのかっていきなりファイブエクスプロージョン撃ちやがった!


…………ダメ。
……………………これは、ダメ。
ヒーローもの的な視点からも、子供向け的な視点からも、フォロー不可です。


せっかくパワーアップしたんでしょう?
劇場の子供たちの応援を受けて、スーパープリキュアになったんでしょう?
それなのに、いつもと同じ技使っちゃ意味がない。
何のために応援したのか、分からないじゃないですか。
演出自体もいつものバンクに、ピヨピヨ動く蝶の羽根が付いただけ。意味ない、羽根の意味が全くないよ。
一応直撃後、シャドウとの会話があったのですが、それ以外はいつもと全く一緒。この技使ったら終わりです。



スーパーヒーローの映画を、例に挙げましょう。
戦隊&ライダーの劇場版では、「劇場でしか見られない」or「劇場で先行初登場」のパワーアップフォーム、というのが恒例です。
もっとも今年はライダーのほうが例外でしたが、「時を超えて、電王4フォームが同時に登場」というサプライズがありました。登場したからにはクライマックスで盛り上げるべく、同時変身とか見せ場を作ってもらえました。
……本音を言うなら、各フォームでの連携技とか見たかったですが。こっちもこっちで個別戦闘が基本、後は牙王にまとめてやられちゃったので。あそこでクライマックスフォーム出すのが自然だよな、とも思いました。まぁソードフォームが、牙王との一騎打ちで決めてくれたのはカッコ良かったのでOKです。
一方戦隊のほうでは、呉越同舟獣拳合体《ゲキリントージャ》。勿論、敵味方が力を合わせて即撃破じゃなく、ゲキワザとリンギの使い分けなど、夢の共闘をしっかり魅せてくれた。


もっともゲキリントージャは、合体ロボの玩具の販促の意味もあったでしょう。スーパープリキュアの玩具が出てれば良かったのですが。
じゃあ、昨年の映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』ではどうだったか?
目玉は確かに、メビウスとウルトラ6兄弟の合体形態《メビウスインフィニティー》でした。
しかし、更なる巨大化を遂げたUキラーザウルス・ネオの前に、即ウルトラ7重合体したわけではなかった。
7人のウルトラマンが、本物の板野サーカスで縦横無尽に飛び回り。劇場では最前列で見ることになってしまった自分たちには認識が難しいほどの勢いで、光線技やアイスラッガー、ブレスレット、ギロチンなどが雨あられ。誰もが圧倒されました。


それを、少しでもいいから。
スーパープリキュアがやってくれたら、どんなに良かったか……
スーパードリームアタックでも何でもいい、スーパープリキュアになったからこその技を、強さを、輝きを、見せて欲しかった。
プリキュアはヒーローものじゃない、分かってはいます。
でも、これはただのパワーアップじゃない。
「観客参加型映画」だからこそ出来る、パワーアップだったんです。
それを生かせなくては、ブチ壊しでしょう。



……結局、スーパープリキュアになったことの利点は。
戦闘終了後、クリスタルを元の位置に戻す時の運搬に、羽根で飛行したことだけでした。
改めて言いましょう。いや叫びましょう。


もったいねぇぇぇえええ!!!!!!


最後の最後でこの息切れは、あまりに惜しい。
ダークプリキュア戦やダークドリームの描写に尺を裂き過ぎた、足りなかった、とは言えないでしょう。今年は昨年と違い1本勝負で、80分あった。
劇場版電王だって、それより短い6,70分でまとめたんです。ディレクターズカットが出るわけじゃないし。
蝶の跳ね付けただけのバンク流すなら、その尺でスーパープリキュアの戦闘見せたほうが良かったのでは? さらに演出が進化した必殺技撃ちながらファイブシンフォニーを少しずつ合体させていくとか、やり方は幾らでもあったでしょう。


そういえば、前述した劇場版電王。
デンライナー&ゼロライナーの連結で、っていうかゼロライナーのドリルでガオウライナーを撃破した後、電王ソードフォームVS牙王になったけど。
この一騎打ちは、後から付け足したものらしいです。ガオウライナー壊して終わりじゃ締まらないからって。
……じゃあ、ファイブエクスプロージョン撃った後、元の人間サイズに戻ったシャドウとスーパーキュアドリームが一騎打ちしてたら、どうなったろう?
龍騎 EPISODE FINAL』のラストバトルの如く絶叫して必殺技を、それもダークドリームの技を借りて、ドリームがシャドウにトドメ差してたら、カッコ良く締まったのかなぁ。
それは流石にやり過ぎかな、でもなぁ……

エピローグ 「あなたが最後に信じるものを見つけたように、私にも信じるものがある。プリキュアの一人として……」編

エンディングテーマは、ガンバランス5ver.でしたが、これも残念。後日談をバックにスタッフロールならベストでしたが、ベターにすら届かない。
TV版のED映像、私服パートを劇場のドレスに描き換え、まではいいとして。
せめて変身後パートを、スーパープリキュアに描き換えて欲しかった。ああ、ホントもう、ダークドリームの最期で力尽きたんだなぁと嘆くばかり……
曲自体も前作に倣い、ぷりきゅあ5本人に唄わせてれば、まだ良かったのに。


もっとも、意気消沈してばかりではなかったです。
最後の最後で、一個だけ押さえてくれていた、重要なポイントがありました。
戦い終わり、のぞみが見上げるは、ピンクのクリスタル。
短いシーンでしたが、守れなかった「友達」を思ってのこの場面、あるとなしとじゃ全然違う。



改めて、ダークドリームの最期について語りましょう。
のぞみは基本的にウソがつけません、というよりバカ正直です。
そんな彼女が、ダークドリームを「友達」と呼んだ。


前述のように、プリキュアは市井の人々と関わることが殆どありません。
声援や感謝があるとすれば、それは市井の人々ではなく、異世界の人々。
光の園、泉の郷、パルミエ王国の人々のために、彼女たちは戦っています。
何故なら、彼らもまた「友達」だから。


のぞみにとっても、それは同じ。
ココ、ナッツ、ミルクは、自分たちの世界に住む「人間」ではないけれど、そんなことはお構いなしに彼女は接し、ケンカしたり、恋したりしています。
だからこそ、ダークドリームとも「友達」になった。


その「友達」を。
夢原のぞみは。キュアドリームは。
守れなかった。


りんの話によれば、小さい頃からずっと、のぞみはこんな性格だった。
プリキュアになった今でも、のぞみは仲間を、友達を励まし続けた。
4人がナイトメアに囚われた時も、のぞみは全く怯まずカワリーノと対峙し、敵地に乗り込み4人を奪い返した。
まさに無敵の、希望の力を持っていたのです。


そんな彼女が。
初めて、望みを叶えられなかった。


これは、夢原のぞみにとって。
『Yes!プリキュア5』本編中における。
初めての敗北なのです。



仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』において。
城戸真司は、自身の分身を「殺す」ことで。
全てのライダーをも「守る」という、自分の“信念”を砕いてしまった。
しかも、力及ばず守れなかった今までとは違う。自ら手を下してしまった。
あの劇場版には、そういう意味があった。流石は井上敏樹脚本、ただのお人好しでは終わらせなかった――見事ながらも、哀しい話です。


のぞみも同じです。
ダークドリームを失うというのは、ココたちを失うことと同義。
世界が守れても、友達が守れなくては、意味がない。


かつて雪城ほのかが、入澤キリヤを守れなかったように。
かつて日向咲美翔舞が、霧生満、薫を、一度は守れなかったように。
夢原のぞみも、「友達」を守れなかった。


城戸真司も、夢原のぞみも。
鏡の世界において、自分の分身と出会い。
決して折れなかった自分の“信念”を、砕いてしまった。
このふたつの映画には、そんな共通点があるのです。


何があろうと戦いを望まぬ城戸真司の、伝説の終わり――「EPISODE FINAL」。
何があろうと希望を信ずる夢原のぞみの、伝説の終わり――「EPISODE FINAL」。


……………………本当にそうなのでしょうか?

秋山蓮《仮面ライダーナイト》
「城戸、正直に言う。
 俺には今まで、友と呼べるような奴はいなかった。欲しいとも思わなかったしな。
 だが、お前は……唯一の友と……言えるのかもしれない」


城戸真司《仮面ライダー龍騎
「ああ。友達さ、俺たちは」



「だが、解ってくれ……俺は勝たなければならない!
 どんなに可能性が少なくても……俺は賭けなければならないんだ……」


真司
「…………」



「戦ってくれ、俺と」


真司
「……ああ。俺の望みを聞いてくれたら、考えてやるよ」



「何だ?」


真司
「死ぬなよ、蓮」



「……お前もな!」



(劇場版『仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』ラストシーンより)

ライダーバトルは終焉を向かえる前に、その首謀者が消滅した。
故に、最後のライダーとなった2人が戦っても、望みが叶えられるかは分からない。
それでも、蓮は戦わなければならない。病床の恋人を救う、その愛しき望みのために。
そんな友達に、真司は言いました。切なる願いを。


「死ぬなよ」と。


自らの分身を葬っても、真司の“信念”は砕かれなかった。
真司は、再び、ライダーを――全ての人を守ろうとしている。
だからこそ、ミラーワールドから現実世界に流出したモンスターに、たったふたりで挑んでいったのです。
蓮も、市井の人々も。全てを守るために。
一度終わった彼のEPISODEは、再び動き出したのです。


なら――のぞみは?
のぞみの“信念”の行方は、彼女のEPISODEの行方は。
きっと、TV版のEPISODEが、その答えを教えてくれるでしょう。
心ある敵に手を差し伸べた、その“信念”が、TV版でどう生かされるか。


夢原のぞみの戦いは、終わらない。
夢原のぞみの物語は、再び、始まろうとしている。
影の中にあって尚も、彼女の希望の光が、輝き続ける限り。


願わくば、その光が。絶望をも照らし、闇をも救い上げられますよう――



お読み頂きありがとうございました。



















蛇足

ここからは本当に蛇足です。


……レビュー書いてて思ったこと。
ダークドリーム」の、人間名が欲しい。
夢原のぞみのコピーなんだから、人間体があったわけで。
ならば、変身前の名前もあってほしかったのですよ。


てなわけで、自分で名前を考えてみた。
コピーと言っても影だから、一応正反対の名前と言うことにしよう。
希望の反対だから、絶望。絶望=デスパライア様だけど、まぁ置いといて。


絶望といえば、『さよなら絶望先生』。
絶望先生の本名は、糸色望(いとしき・のぞむ)。
「愛しき望み」=「絶望」とは、久米田先生も巧い名前をつけたものだと感心して仕切りですが、再び置いといて。
……そう、「のぞ“む”」なんですよ。糸色先生の「望」の読みは。
ここに引っ掛けて。


命名、糸色のぞみ(いとしき・のぞ“み”)。


復活したダークドリームが、糸色家に居候するんですよ。
そこで彼女は、本当の絶望を教わるんですよ。絶望先生の授業で。

糸色望(CV:神谷浩史)
絶望した! ガンダムマイスターに相応しくない君に絶望した! こんな早々にナドレを晒した俺に僕に私に絶望した!(以下延々と続く)」


ダークドリーム
「…………」



ダークドリーム
「私、絶望の仕方も解らなくなったんだけど……」


夢原のぞみ
「いいんじゃない、わからないままで」

お後がよろしくないようで。切腹。ぐふっ

*1:これはかれんが幼少の頃、祥子さまのお姿に憧れた故の……って設定で、マリみてVSプリキュア5を誰か書いてくれませんか?

*2:龍騎の体色は赤、一方リュウガは黒っぽい。もっとも光の当て方などで、ある程度は解らないよう見せてはいましたが。ちなみに、リュウガの仮面の奥の目が尖っているのはお約束通り。

*3:映画のCMではもっと優雅に仮面をつけていたのだけれど、何故かカットされたらしく、あっさり目な動作に。

*4:今は、ね。将来どうなるかは、彼らの頑張り次第。

*5:その回では一瞬だけ、田中真弓さんら声優陣が写ったのですが。別に今田&田中と絡むことはなく残念でした。確かふたり共、そっち方面詳しいって聞いた覚えがあるのに……

*6:そういえば、あの時の芸能人ゲスト・本人役で登場の向井亜紀さんは、あれが復帰第一作らしいですね。お子様がプリキュア見てるそうな。主題歌を唄う、うちやえゆかさんも本人役で出演されてました。

*7:龍騎』の世界は同じ時間をループし続け、延々とライダーバトルを繰り返し、TV版の最終回でループから抜け出したという話だから、時系列的には問題ないハズ。

*8:ちなみにゴーゴーファイブは、正式な6番目の戦士がいないそうな。

*9:公式で「匹」なのね。妖精を「匹」扱いなのね……